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ジャスト・イン・タイム(JIT)方式、かんばん、アンドン、ポカヨケ、ヨコテンなど、そのキーワードはそのまま世界に通用し、リエンジニアリング、TQMからSCM、シックスシ題名は「T生産方式の″遺伝子″を探る」(H/S・S執筆、S訳『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス』二○○○年三月号)である。
この論文のなかで、「Tは驚くほどオープンにそのノウハウを披露してきた。
しかし不思議なことに、上手に再現できたメーカーは皆無である。
数千という企業から数十万人ものマネジャーがTの工場(もちろんアメリカも)を訪問したが、Tに匹敵するような成果を上げることはできなかった」と述べている。
T生産方式を教えるコンサルティング会社もあまたある。
その改善方法の多くはパッケージ化されている。
しかし、いくら出来合のT生産方式を導入しても、本当に成功する企業はほとんど出てこない。
現状のひどい生産システムを改善することにより、一時的に大きな効果を出すことはそれほど難しくないが、それ以上はよくならず、システムは古びていくばかりなのに、社員による自主的な改善活動は根づかずに終わってしまうことのほうがはるかに多い。
T生産方式が世界中でどのように導入されたかについて、ハーバード・ビジネス・スクールが四年間にわたって行った調査研究の結果が、一九九九年秋、『ハーバード・ビジネス・レビュー』に発表された。
さらに「T生産方式の分析は、なぜこうも難しいのだろうか。
それは訪問者たちが工場で見たT生産方式の本質を、そこで用いられているシールや手法と取り違えてしまうからだ」「T生産方式は過去五十年にわたる努力によって自然と育まれてきた賜物と言える。
それゆえ一度として文書化されたことはなく、Tの従業員ですら理路整然と説明できる人はあまりいない。
Tの従業員以外の人に、T生産方式がきわめて理解しにくいのはこのためである」と指摘している『日経ビジネス』(二○○○年四月十日号)は「Tはどこまで強いか、日本的経営最後の砦」という特集を組み、知られざるT流経営哲学に迫っている。
この記事によると、あるT生産方式の指導者が「T生産方式の強みは何か。
初級者は、在庫が少ないことだと答える。
中級者になると、問題を顕在化させ、生産性向上、品質向上を強制するメカニズムが含まれていることだと言う。
しかし上級者は何と言うか。
問題を顕在化して解決する作業を繰り返すうちに、問題がない状況が不安になって、みんなで一生懸命問題を探し始めることだ」と語ったと言う。
また「特に指示もしないのに、社員が自発的に働き、成果を出してくる底知れぬ強さ。
今年三月八日、春闘ヤマ場のT労使協議会の席上。
張は工場職場が自主的に『常識はずれ』の改善活動に取り組み、多くの成果を上げたという労組の報告を聞き、『本当にありがとう』と深々と頭を下げ、しばらくはそのまま動けなかった」と言う。
ここで出てくる社長のT氏は、T生産方式の生みの親と言われるO氏に学んだ直弟子である。
彼は一九七三年につくられた社内テキスト『T生産方式』をまとめあげて、社内・グループ企業に伝導した。
一九五○年代に当時工場長だったO氏が始めた「自主的な常識はずれの改善活動」(O方式)はTの他工場にまで導入されるようになり、七○年代にはTグループ全体にまで広げて展開された。
五○年代からのO方式の展開にかかわってきた、著者のKの経験によれば、六○年代にTはO方式を進化させ、「企業をいかにして変化させ続けるか」というT式企業革新の方法論(T方式)を確立したと考えている。
世界中のどこであっても、「自主的な常識はずれの改善活動」を全社あげて展開し続ける会社はそうあるものではない。
これを可能にするものが「知られざるTの企業革新方式」なのである。
実は公開された「T生産方式」は、システムを「刻々と変化させ続ける」T方式の展開活動の結果、新しく生まれた生産システムにすぎない。
この「T式生産システム」が七○年代にテキストを基にして協力会社にまで対象を広げて導入される過程で、通常であれば知られることのないTの生産ノウハウが「T生産方式」として世界中の注目を浴びるようになった。
特に日本の産業界に追い越されつつあったアメリカは、産・官・学あげて日本の製造業調査を行い、その結果得た一つの発見が、F生産方式(フォーディズム)を乗り越えたT生産方式(トヨティズム)の脅威であった。
これをアメリカでは「リーン生産方式」と呼んで八○年代に入ると一斉に導入し始めた。
九○年代に入るとヨーロッパでも導入が始まり、欧米の先進企業は九五年にはほとんど導入を完了した。
し「T方式」という企業革新の方法論は公表されていない。
O著『T生産方式』(一九七八年、D社)にはそれに関する記述があるが、その大部分が言葉には置き換えにくい体感的に持っているもの(暗黙知)であるため、断片的に窺い知るしかなかった。
先の『ハーバード・ビジネス・レビュー』の記事にもあるように、「それゆえ一度として文書化されたことはなく、Tの従業員ですら理路整然と説明できる人はあまりいなどのは、実はこの「T方式」と呼ぶべきものなのである。
T生産方式と言った場合、日経ビジネスの記事を参照すれば、初級者はTの「生産方式」ととらえ、中級者は「改善方式」ととらえ、上級者は「企業革新方式」ととらえると言える。
ここで言う「企業革新方式」こそが真の「T方式」であり、これを理解できる人は非常に限定されている。
この「T方式」の秘密を解明することに挑んでいく。
これはO著『T生産方式』(D社)にも書かれているように、なんとか日本の経済風土に合ったオリジナルな方法を考え出そうとして生まれた「日本的イノベーション(企業革新)方式」であることに注目して見ていきたい。
T生産方式が最初に世間に注目されるのは、一九七三年の第一次オイルショックの後である。
オイルショックによる不況で日本経済はゼロ成長に陥り、その後、数年にわたり低成長が続いた。
このような低成長の時代になると、不況や危機に強いT生産方式の特徴が際立ってくる。
二十一世紀を迎えて、デフレ不況とグローバル競争の時代をいかに勝ち残るかを企業が問われる今、あらためて世界的にT生産方式を見直す風潮があるのもそのためである。
T生産方式は、戦後まだ日本の自動車の需要がごく少ない時期に、F自動車の大量生産方式に負けないように、圧倒的に少ない生産量でその生産性を飛躍的に高めるにはどうすればいいのか、という課題の解決を必然的に迫られて考案されていったものである。
高度成長がストップし、減産体制を敷かなくてはならなくなったとき、T生産方式の真髄を見ることができる。
従来の大量生産方式では生産性がきわめて悪くなるからである。
F方式が、大量生産をすることで徹底的に安くつくることができる方式であるとすれば、T生産方式は、多種少量でも安くつくれる方式である。
敗戦(一九四五年)後の廃嘘のなかから生産を再開した日本の自動車業界は、一九五○年には早くも各社苦境に陥った。
この年、Tも倒産寸前に追い込まれ、社長のT氏は労働争議の責任をとって退任し、再建策としてT自動車工業とT自動車販売に企業分割がなされた。
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